歯周病なんて診断を下されたのは、3月22日のことだった
小学生の頃と成人前後、そして数年前、定期検診のために歯科にお世話になっていた
幼少の頃に受けたフッ素コーティングと3回の親知らず抜歯を経て、私の口腔のコンディションは良好だった
たまに歯茎が腫れたり痛んだりはしたが、しっかり歯磨きをして過ごせば数日で治った
しかし近頃は全然歯科に行けてない
引っ越しのドタバタや金銭面的なアレで余裕なんてなかったし、それよりも治すべき部分があったのでそちらを優先していた
そして話は3月20日
歯の英才教育を受け自信満々な私は、今の生活に余裕があると判断し久々に歯科の予約を取った
ネット予約なるコミュ障にも優しいシステムを通じて来院予定を捩じ込む
備考欄に「特に痛みは無いけど定期検診を希望します」と書く
これで完璧 あとは当日を待つのみ
歯磨き頑張ってますね!虫歯も無いですね!凄いですね!って褒められると思ってた
3月22日
ウッキウキで歯科に到着
問診票を書いて自分の番が来るのを待つ
スマホをポチポチしてると女医さんにすぐ呼ばれた
歯科によくある背もたれが倒れる椅子に座って女医さんの話を聞く
まずは口腔の写真を撮るらしい
大きく口を開けて鏡を突っ込んで撮ったり、器具を使って「い」の口にして奥歯の表面が見えるように撮ったり(説明が難しい)
5枚ほど撮ると撮影会は終わり
撮った写真は椅子の目の前にあるモニターに表示される
我ながらなかなか良い状態に見えr
女医「歯茎腫れてますね」
え?
マジ?
女医「ちょっと歯周病の検査しますね」
ちょ、ま、
私「アッハイ ワカリマシタ」
歯周病の検査はプロービング検査という方法で行われる
メモリのついたかぎ針みたいなの(プローブ)を歯と歯茎の間に差し込んで溝の深さを測る
溝は通常1mm~2mm程度だが歯周病の歯茎だと3mm以上、重度だと10mm差し込めるらしい 怖すぎる
このプロービング検査、1本の歯に対して何ヵ所計測するかによって派閥があるようだ
私の場合6ヵ所計測することになったので、永久歯28本+親知らず1本で…
174回プスプスされた いってえ!!
前歯はそんなに痛くなかったけど下の奥歯周辺が酷かった 途中で血の味もした
女医さんがタブレット端末にデータを入力し、プロービング検査終了
うがいしてねと言われたのですぐ横にある自動給水装置の水を口に含んで吐き出すと真っ赤だった 軽くホラーだ
モニターに検査結果も追加で表示された
女医「思ったより歯周病が進行していました」
えぇ…嘘でしょ…
溝が3mm以上の場所が半分あり、中でも出血した箇所がさらに半分あった
歯茎の炎症が酷くなるとプローブを差し込んだ時に出血するんだとか
特に右下の唯一現存する親知らず周辺が酷く、6mmまで溝ができているところもあった
なんで?!毎日歯磨きしてたよ?!
眠かろうが酔っぱらおうが歯磨きは欠かさずやってたよ?!なんで?!
そんな事を内心思いつつ事態を飲み込もうとしていると院長さんがやってきた
女医さんと院長さんが何やら話していたが多少パニックになっている私の耳にうまく入らない
話し終わって院長さんが私に話しかける
ふわふわした気持ちで軽く挨拶をして、すぐに本題に入った
院長「歯周病が進行すると歯を支える顎の骨が溶けるんだ、今どんな状態か詳しく知るためにレントゲン撮ろうね」
また写真撮影するんすか?!?!
血の味がする口内に苦い顔をしながらレントゲンを撮った
この時既に現実逃避していて「あ~最終的な料金おいくらだろうな~」とか考えていた
レントゲンのデータもモニターに追加される 便利だね
院長はモニターを見ていた あまり良くは思っていなさそうだった
院長「まずはこのレントゲンね、この歯茎のラインの下にあるのが顎の骨なんだけどね、ここ少し無くなってるね」
ヒエッ
院長「次はこの写真を見てほしいんだけど、ここ小さく黒くなってるよね、これプチ虫歯」
ヒイッ
院長「今のままだと顎の骨が溶けて歯がグラグラしたり抜けたりするから危険だよ」
アババババババ
院長「これからの治療なんだけど、プチ虫歯より先に歯周病のケアをしていくよ 歯磨き指導して、それでも磨き残しがあるなら歯と歯茎の間の歯垢を除去する手術をするよ」
私「ハイ…」
院長「だからね、まずは歯磨きを頑張ってほしい」
私「ワカリマシタ…」
通院前に期待していた褒められるなんて事は一切無く
ただただ現実をキッチリ突き付けて私のメンタルはグズグズになった
豆腐メンタル
あまりにもショックでこの後の記憶はほぼ残っていない
ただ、唯一思い出せることは
「1週間後にハブラシを持ってまた歯科に来てくれ」
と言われたことだった